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熊本地震の本震前に本震発生の兆候を示す特徴があったことを発見


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静岡県立大学グローバル地域センター地震予知部門総括の楠城一嘉特任准教授が率いる研究グループは、「熊本地震の本震の前に発生した規模の小さい地震の活動が通常と違い、本震発生の兆候を示す特徴があった」とする研究成果を発表しました。熊本地域のような、活断層が分布する地域で大地震が発生した場合、大地震が隣接の活断層で続発する可能性があるかの評価に結びつく点で、地震防災上、重要な研究です。本成果は、地球科学の専門科学雑誌『Tectonophysics(テクトノフィジックス)』に掲載されました。

本研究のポイント

  • 小さな地震まで含んだ統計解析から地下の状態を推定し、いつもと違う異常を捉える技術の開発に成功しました。その技術を使って、熊本地震に先行して高い力がかかっており、大地震の起きやすい状態であることが分かりました。
  • また、本震の起きる布田川断層では、かかっている力が本震の発生直前に緩和したことがわかりました(図1)。ゆっくりした滑り(断層面に沿って瞬時に滑る通常の地震と異なるゆっくりした滑り)が同断層で直前に起き、つまり、前駆滑りの可能性があります。
  • 一方で、前震活動が活発だった隣接の日奈久断層では、本震発生直前にゆっくりとした滑りを示唆する結果は見られませんでした(図1)。
  • 開発した技術を用い活断層と地震活動を調査することで、大地震後にまた別の大地震が近くで発生しやすくなっているかを見分けられる可能性がでてきました。

図1: 研究結果の一例。(a)研究地域(図の(b))を太黒線で囲んだ。赤色の線は活断層、赤色の三角は活火山。(b)本震(マグニチュードM7.3)は、2016年4月16日に布田川断層で発生した。震央(破壊の開始した地点)を黄色の星印で示す。その約1日前に日奈久断層でM6.5の前震が起き、M6.4の前震が起きた(赤色の星印で震央を示す)。前震活動は本震直前まで活発だった。(c)布田川断層沿いの小さな地震まで含んだ統計解析の結果。この解析では、地震の発生頻度と規模を使って出した「b値」という指標を用いた。b値が大きいと地下に低い力がかかっており、b値が小さいと地下に高い力がかかっていると考えられる。(c)の結果は、M6.5の前震以降、布田川断層沿いの力は徐々に低くなり(b値は大きくなり)、本震直前では、M6.5の前震の前と比べて、十分に力は低かった(b値は大きかった)ことを示唆する。(c)の結果から、断層面に沿って瞬時に滑る通常の地震と異なる”ゆっくりした滑り”が同断層で直前に起きた、いわゆる、”前駆滑り”の可能性が考えられる。(d) b値の解析から、本震直前では、日奈久断層沿いの力は弱くなっていたとは言えない。

掲載された論文

<論文タイトル>
Changes in seismicity pattern due to the 2016 Kumamoto earthquake sequence and implications for improving the foreshock traffic-light system
<著者>
静岡県立大学グローバル地域センター地震予知部門 特任准教授 楠城 一嘉 / 特任准教授 鴨川 仁
中部大学中部高等学術研究所国際GISセンター 准教授 井筒 潤
東京学芸大学 研究員 織原義明
<掲載学術誌>
Tectonophysics(テクトノフィジックス)、第822巻、ページ番号229175、DOI: 10.1016/j.tecto.2021.229175
日本時間:2021年12月20日に出版
論文ページ:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0040195121004571(外部サイトへリンク)

関連リンク

◎Tectonophysics | Journal | ScienceDirect.com by Elsevier
https://www.sciencedirect.com/journal/tectonophysics(外部サイトへリンク)

◎静岡県立大学グローバル地域センター
https://www.global-center.jp(センターサイトへリンク)

◎中部大学中部高等学術研究所国際GISセンター
http://gis.chubu.ac.jp(外部サイトへリンク)

◎東京学芸大学
https://www.u-gakugei.ac.jp(外部サイトへリンク)

著者からのコメント

<本ニュースを読まれた皆さまへ>
一般的に地震を確度高く予知することは現状で困難と考えられており、本研究も地震予知ではありません。
しかし、地下の状態の異常を捉える技術開発までは可能になりつつあり、本研究はその先駆けです。今後研究をすすめ、富士川河口断層帯といった静岡県の活断層に応用する予定です。
また、この技術は火山にも応用可能と考えており、県内の伊豆東部や富士山の地下の状態を監視するプロジェクトが現在進行中です。
本ニュースがきっかけで、改めて防災意識をもって、防災への事前の備えを再点検していただければと思います。



本研究の一部は、日本学術振興会による科研費(20K05050)の助成、中部電力株式会社「原子力に係る公募研究」の助成、東京海上各務記念財団の研究助成、中部大学問題複合体を対象とするデジタルアース共同利用?共同研究IDEAS202111の助成、文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画(第2次)」および「情報科学を活用した地震調査研究プロジェクト(STAR-Eプロジェクト)」(JPJ010217)の助成を受けて実施しました。また、本研究では、気象庁一元化震源カタログを使用しました。

お問い合わせ先

〒420-0839 静岡県静岡市葵区鷹匠3-6-1 もくせい会館2階
静岡県立大学グローバル地域センター 特任准教授 楠城一嘉
電話: 054-245-5600 
メール: nanjo@u-shizuoka-ken.ac.jp

(2021年12月23日)

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